屏風

木の枠に小さなふすまのようなものを数枚つなぎ合わせて折り合わせたが可能な構造になっている装飾建具。
「風を屏(ふせ)ぐ」という言葉から屏風と呼ばれるようになりました。
基本的な構造は、木枠の骨格に和紙や鳥の子または裂地や織物を張ったもので、この細長いパネルを一扇といい、向かって右から第一扇、第二扇と数えます。
これを接続したものが屏風の一単位、一隻(一畳、一帖)です。
かつては屏風側から見て右側を右隻、左側を左隻と呼びましたが、近年は向かって右側の屏風を右隻、左側の屏風を左隻と呼ぶ傾向にあります。


〜作業の流れ〜


屏風下張りの構造


下張り構造の断面図

組子下地の仕組み(返り):框の側面を斜めに削り下張りする和紙の厚みを表に影響させないための仕組み。

全ての下張りを終えた時、平らになるよう下張りの層に応じて框の削る角度を調整する。

工程 ② 〜 ⑤までの構造 ↓↓


紙蝶番の仕組み

下地の丈寸法を奇数割りした羽根(蝶番紙)を互いに巻き付ける。


① 組子下地:屏風の本体である 格を構成する縦横の格子組み。

杉や桧などの木材を木取りし、交互に凹状のホゾを入れて組み合わせたもの。

隅板を入れることで経年劣化でおきる木の痩せによる上張りの隅シワを防ぐ。


② 骨縛り: 組子下地が歪まないように和紙で固定する作業。
西ノ内紙や楮紙・反古紙の強度の強い和紙を水刷毛等で満遍なく湿し、濃い糊を使って格子の正面のみに糊を塗布して張っていく。

③ 胴張り:光が透けるのを防ぐためと厚みを出すために、骨縛りの次に行う工程。

防虫のため土を混ぜて漉かれた間合紙を用いることもある。

和紙の全面に糊を付け框(組子下地の外側部分)の内側ギリギリまで張る。


④ 蓑張り:胴張り後の作業で薄美濃紙など蓑傘状に和紙を張ること。

和紙を重ねて張ることによって破れや凹みを回避するだけでなく、下部が浮いた状態になって空気が通るため湿度が調節され弾力のある仕上がりとなる。

防音効果も兼ね備えている。


⑤ 蓑縛り:襖や屏風・和紙張りする壁面の下張り工程で蓑張りの次に行う作業で厚手の楮紙や反古紙などしっかりした和紙の全面に薄めた糊を塗布し、蓑張りの上部から下部へ張っていきます。


蝶番組み:下張りを終えた各下地をつなぎ合わせる工程。
屏風の重さや折れ曲げる際にかかる力に耐えれる、強靭な和紙を横目に切り濃い糊を使って、下地に割り付けた寸法に羽根付けし羽根をお互いに巻付ける。

くるみ懸け:組み終えた蝶番部分を全面に覆う和紙を貼り補強する。糊が乾燥した後、外側へ折り返して、同様の作業を反対側についても行う。


削り付け:下地を幅・丈の順に寸法通り鉋で直角に削る。


⑥ 袋張り(一層目):襖や屏風・額装の下地への下張り工程で、上張りの張力によるねじれや反りを防ぐ為に石州紙や 美濃紙など薄手の和紙の四方だけに糊を付けて張ること。

上張りを安定させて湿度変化による伸縮を防ぐ効果がある。


⑦ 袋張り(二層目):一層目同様に石州紙や 美濃紙など薄手の和紙の四方だけに糊を付けて張ること。

次の上張りの表面に和紙の段差が出ないよう和紙の表面にくる二方を喰裂き(和紙の繊維を出すこと)にし、張る。

上張りを安定させて湿度変化による伸縮を防ぐ効果がある。


⑧ 上張り:襖や屏風・額装など最も外側の表面に張る工程。

鳥の子や織物・金箔加工紙など多種多様な紙のほか絹などが用いられ、それぞれの特質をわきまえた作業上の注意が求められる。

表面

裏面


縁打ち:屏風の外側にくる角を留め(45°)で打ち仕上がりを綺麗にしていきます。

装飾の金具を取り付ける場合もあります。