受け継がれてほしい、大切な日本の伝統技術 〜表具師の技〜
【今回は、表具の基本であり最も重要な「裏打ち」作業を紹介! 】
『糊・和紙・創』・・・糊と和紙が創りだす伝承
『過去・現在・未来』・・・過去の作品を現在にさらに次世代に引き継ぐ
『裏打・保存』・・・長期保存を可能にする先人知恵
『相承』・・・弟子が師から(師資相承)子が父から(父子相承)次々に受継ぐ
過去の作品を現在で修復し次世代に引き継ぐ技術「裏打ち」は、
作品の裏に糊を使って紙を貼りつけて補強し、長期保存を可能にする先人の知恵です。
弟子が師から、子が父から次々に受継ぐために欠かせない伝統の技をご紹介します。
表具に関する伝統技術などわかりやすくお伝えします!
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動画でお見せした『裏打ち』した作品。糊・和紙により作品に張力が生まれ新たな時代へ伝承がはじまります。
掛軸、額装、屏風などに仕立てる事によりさらに保存力が高まります。
保存方法や扱い方にもよりますが、半世紀以上の保存が可能になります。
*正しい保存方法や取扱方がわからない方は、お伝えいたしますのでお気軽にご相談ください。
『裏打』
表具の作品製作において紙本(和紙等に描かれた書画)・絹本(絹等に描かれた書画)本紙(作品)や裂地(表具用布地)を補強し変形を防ぐために、裏面に糊で和紙を張る技法のこと。用いる裏打ち紙と糊はこれらの種類や本紙・裂地の状態、目的によって異なる。
仕上がりに関わる基本で最も重要な技法の一つで、作業時間の大半を占める。
作業にあたっては裂地・裏打ち紙・糊など材料についての知識や扱い方、および刷毛の使い方に習熟が必要であり、大幅(大きい掛軸)や特殊な本紙・裂地の裏打ちには経験と技術が求められる。
裂地の裏打ち
『糊』
表具師は接着の専門家であり、接着のメカニズムと同時に最重要接着剤である小麦澱粉からつくる澱粉糊について熟知していなければなりません。
表具技能の多くがこれの用法に依存しており、それが証拠に古くから数多くの口伝がなされ、また先達の表具師は表具作業以外では用いない古糊といった特化された糊まで開発してきました。
現在、表具作業に使用する接着剤には、大きく分けて澱粉系接着剤(狭義の糊)と化学的に合成された接着剤(化学糊)の二つがあります。
糊炊き動画
炊き上がりの糊
澱粉糊(古糊)*10年ほど熟成させた糊
『和紙』
表具作業において特定の部位に必要とされる表装紙の機能を、表具師は長年に亘って紙漉きに要求してきたことから、漉き元はこれに応える形で特化した表装紙を生み出してきました。そして、江戸時代にはほぼこれが完成したといわれています。
いいかえれば、特化された表装紙の持つそれぞれの特性を活かして使用することが可能であり、このあたりの経験技術的な用法が表具師の財産とも呼べるべきものになっています。
表装紙として多用する美濃紙、美栖紙、宇陀紙、石州紙、間似合紙などについても個別に述べ、それぞれの特長だけでなく用法についても明らかにしています。
掛軸に用いる和紙『薄美濃紙・美栖紙・宇陀紙』
和紙のとなる楮の皮
Photo:播州ちくさ手漉和紙工房 現地見学
和紙を漉くための大切な道具『簀桁 suketa』
Photo:播州ちくさ手漉和紙工房 現地見学
和紙漉きの工程『打解 dakai』
Photo:大因州製紙協業組合にて体験
Photo:大因州製紙協業組合にて体験
美濃紙
岐阜県美濃市などで漉かれる楮紙の総称。美濃国(岐阜県南部)は古くから紙を多く生産されている。美濃紙は大小や厚さの種類も豊富で、用途に応じて使い分けられる。
薄手のものは薄美濃紙と呼ばれ、表具加工では最も使用頻度が高い和紙である。
美栖紙
奈良県吉野産の極めて薄く柔らかい楮紙。紙料に胡粉を混ぜて簀のまま干板に伏せて作られる。表装の肌裏打ち・増裏打ち・中裏打ちに用いる。厚さに種類があり、使い分けて厚みや堅さの調整をする。古糊・打刷毛とともに、伝統的な表具技術の中枢を担ってきた重要な要素といえる材料である。
宇陀紙
奈良県吉野産の厚手で柔らかい楮紙。紙料に白土を混入した楮紙で、色が白く表面が滑らかで紙質が引き締まっている。表装の総裏打ちに用いる。古糊・打刷毛とともに、伝統的な表具技術の中枢を担ってきた重要な要素といえる材料である。
石州紙
石見国(石州)の津和野・浜田藩で生産された楮の白皮・甘皮を原料として漉いた和紙。
表具では大画面の本紙の裏打ちをはじめ、襖の下張り、屏風の蝶番の羽根や浮張り、障子などに用いる。
間似合紙
摂津の名塩(兵庫県西宮市塩瀬町)が主産地で、地元産の泥土が混入される雁皮を主原料とした、和紙で特殊な工法である溜漉きによって漉かれている紙。
襖・屏風の下張りに用いることで光の透け留め・防音効果をもたらします。
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